翻訳

MT (機械翻訳)
MTはMachine Translationの略語。
ある言語から別の言語への変換を、コンピューターによって自動的に行うこと。
近年、人間の脳の神経細胞における情報伝達の仕組みを模したニューラル機械翻訳 (Neural Machine Translation、NMT) も登場。このNMTは「AI翻訳」とも呼ばれている。
PE (ポストエディット)
機械翻訳による翻訳結果を人間がチェックして手直しを行い、翻訳を仕上げる作業。翻訳品質が不十分な場合に、翻訳品質の向上を図ることができる。
Pre Edit (プリエディット)
機械翻訳を行う際に、機械が翻訳を行いやすくするため事前に原文に手を加える編集作業のこと。これにより、出力される翻訳品質の向上を図ることができる。
映像翻訳
主に海外の映画、TV番組、DVD、プロモーションビデオなどの翻訳。「字幕翻訳」や「吹き替え翻訳」などがある。
産業翻訳/実務翻訳/技術翻訳
ビジネスにおいて、官公庁や企業で必要となる様々な翻訳。
分野は工業/自動車/IT/医薬/金融/特許/法律・契約書/マーケティング/WEB/アパレルなど、多岐にわたる。
出版翻訳
様々な書籍の翻訳。文芸作品の場合、文芸翻訳ともいわれる。海外で出版された外国語の本を日本語に翻訳する場合と、日本語の本を外国語に翻訳する場合がある。
校正/プルーフリーデイング
翻訳後に行う翻訳者以外の第3者によるチェック。翻訳内容について、訳抜け・誤訳・誤字脱字・表記ゆれ、指定用語・指定スタイルの使用、正確さ・わかりやすさ・流暢さなどについて適正であるかを確認し、適宜修正する作業。クライアントの要望次第で、具体的な作業内容は異なるため、事前確認が重要。
例) チェック時のレイアウトの有無、原文クロスチェックの必要性、指定用語の確認の有無等
校了
すべての校正作業が終了した状態。
責了 (責任校了)
校正の最終段階で、お客様先に最終的な確認をとることなく、制作側の責任で校了とすること。
例) 一旦校了後に、誤字レベルの微細な要修正箇所が見つかった場合、修正後のクライアント確認無しで、制作側の責任で修正確認を行うことで校了とすること。この場合、責了でよいというお客様の了承が必須。
コーパス
言語学において統計的な分析や研究を行う目的で集められ構築された、言語テキストの集合体。ラテン語で「身体」を意味する ‘corpus’ が由来。当初は主に言語研究の資料とすることを目的としていたが、近年では言語学に限らず、原文と翻訳を対応させたパラレルコーパスの機械翻訳への利用など、学術的な目的を離れたさまざまな領域でも活用。
スタイルガイド/表記規則
翻訳する際の表記方法を指定するルール集。当該翻訳テキスト内の表記を統一するための、文体・用語・文字表記・お客様固有の各種の指定などについての指示が記されている。
例) 日本語表記の場合、敬体 (ですます調) か常体 (である調) か、使用する句読点の種類、アルファベットや数字、括弧やスラッシュなどの記号類を全角にするか半角にするか、カタカナ複合語の表記方法 (一語にする、中黒を入れる、半角スペースで区切る) 、長音記号の有無、送り仮名の表記方法など。
日本翻訳連盟は「JTF日本語標準スタイルガイド」を発行。
詳しくはこちら
素読み
基本的に訳文のみを読み、誤りを見つけたら修正する作業のこと。ただし、不明点が単純な誤字脱字にとどまらない場合、原文や参考資料などとの照合が必要となることもある。具体的な作業内容については、クライアントとの事前確認が重要。
ソース言語/ターゲット言語
ある言語から別の言語に翻訳する際の、原文の言語がソース言語、訳文の言語がターゲット言語。
例) 英語から日本語に翻訳する場合、英語がソース言語、日本語がターゲット言語。
チェック/チェッカー
翻訳後に行う確認作業のこと。翻訳内容について原文と照合しながら、訳抜け・誤訳・誤字脱字・表記ゆれ、指定用語・指定スタイルの使用、正確さ・わかりやすさ・流暢さなどについて適正であるか確認し、適宜修正する作業。
チェッカーはこの作業を行う担当者。「校正」「プルーフリーディング」と同義で用いられる場合もある。
ナンバリング/付番 (つけばん) /合い番号
原文と訳文の対訳を明確にするために割り当てる番号。原文側の該当箇所にそれぞれ番号を割り振り、訳文側にも同じ番号を割り当てる。
例) スキャンPDFのみで翻訳をする場合、訳文の配置を明確にする場合など
トライアル
1. クラアントが初めて依頼する際に、品質などを知るために無料あるいは低価格で依頼できるお試し翻訳。 (一般的に字数制限などの条件あり)
2. 翻訳会社に翻訳者として登録するにあたり、個々の翻訳会社によって行われるテスト。
ネイティブチェック
対象となっている言語を母語とする人 (ネイティブ) が行うチェックのこと。
翻訳案件では、翻訳先 (原文ではなく訳文側) 言語を母語とする人 (ネイティブ) が行うチェックのこと。
ベタ打ち
MS Wordなどの汎用的なファイルを用いて、レイアウト無しで原文テキストに対応する訳文をごくシンプルに入力する作業のこと。より迅速な納品が可能となり、文字情報のみで内容確認ができれば十分という場合などに有用。
訳抜け
原文の内容の一部分が、特別な意味なく単純に訳文で抜け落ちていること。
リライト
訳文を、その使用目的などに合わせて、より伝わりやすいように書き換えてブラッシュアップすること。クライアントの意向に沿った形とするため、リライト後の文章が原文とはかなり異なる内容になることがある。
ローカリゼーション (ローカライズ)
製品やサービスなどを特定の市場の現地環境に適合させること。現地でより受け入れられ、より訴求力があるものにするため、テキストの翻訳に加えて、画像や色を含むデザイン全体、フォーマット、ユーザーインターフェース、各種仕様など様々な点を、現地に合わせて変更することも含む。
翻訳メモリシステム
過去の翻訳資産をメモリ化して最大限に活用できるシステム。
過去の翻訳を自動的に取り込むことができ、翻訳のコスト削減と品質向上に役立つ。
字幕翻訳
映像の音声を文字起こしして翻訳し、訳文を画面上に字幕で表示させる作業。
時間的/字数的な制約があるため、簡潔な表現で的確に翻訳することが求められる。
意訳
前後の文脈も含め、原文全体に込められた意図を的確に伝えられるように翻訳していく方法。日本語として自然な、読みやすい訳文になるというメリットがある。
直訳
原文の文法構造や単語に忠実に翻訳していく方法。原文に書かれている情報を過不足なく伝達できるというメリットがある。
原文併記
翻訳済みファイルを原文と訳文が併記された状態に仕上げること。訳文と原文を照らし合わせてチェックしやすい、どこの箇所を翻訳したものか確認しやすい、などのメリットがある。

ツール

CATツール
「CAT」はComputer Assisted Translationの略語。
翻訳そのものを行うのではなく、翻訳者やチェッカーの翻訳/チェック作業を支援するツールのこと。
人が翻訳した文章を翻訳メモリとして蓄積して、次の翻訳に利用する。
翻訳者やチェッカーが翻訳対象箇所と過去の類似した翻訳文を比較検証し、過去の翻訳を訳文として取り込むことができる。
それにより正確さを確保しながらよりスピーディな作業進行が可能になる。

その他のメリット:
用語や各種表記、同一原文の訳文のゆれを排除することで、表現統一が可能。
専用辞書の登録用語を自動的に表示することで、素早く的確な用語を採用。

OCRソフト (文字認識ソフト)
OCRはOptical Character Recognitionの略語。「光学的文字認識」を意味し、スキャンされた画像の中にある文字を認識してテキストとして抽出する。それにより、テキストに編集を加えたり、分量を算出したりなど、様々な作業が可能になる。
TermStar (またはTermStar NXT)
シュタールが開発したTransit内で使用する用語管理のためのソフトウェア。
必要な用語を登録して辞書データベースとして管理でき、辞書の編集や拡張、用語の検索などが可能。
Transit (またはTransit NXT )
シュタールが開発した翻訳メモリシステムのこと。詳細はこちら
インポート
CATツールの場合、インポートとは、翻訳対象ファイルを取り込むことを指す。これによってドキュメントからレイアウト情報が分離され、翻訳対象テキストが抽出される。
エクスポート
CATツールの場合、エクスポートとは、翻訳済みテキストとレイアウト情報を統合し、訳文の入った状態のドキュメント (翻訳済みファイル) を生成することを指す。
統計情報 (解析レポート)
CATツールの統計情報の機能により、過去の翻訳とのマッチ率 (100%、99%~95%など) や、マッチ率ごとの単語数などが記載されたレポートのこと。
ファジーマッチ (あいまい一致)
CATツールの技術のひとつで、過去の原文/訳文のデータベース (翻訳メモリ) と新規原文を照合し、既訳の中で類似するものを表示する機能。一致率の閾値はCATツール内の設定で調整することができる。完全一致ではなくとも、部分的にでも一致した箇所があれば、それを活用することが可能になる。
プリトランスレーション
翻訳したいテキストと同じ文を過去に翻訳したことがある場合、Transitが翻訳メモリ内を検索し、該当の訳文を自動的に挿入すること。
翻訳メモリ
過去の翻訳の原文と訳文を一対としてメモリ化したもの。
用語辞書
翻訳に必要な用語を辞書として利用できるようにしたもの。
Transitが使用する用語辞書機能「TermStar」では、案件や製品に特有な表現や用語を登録した辞書を独自に作成することができる。
レイアウト再現
元の文書のレイアウトを翻訳済みファイル上で再現すること。

DTP

DTP
DTPはDeskTop Publishing (机上出版) の略語。
編集、デザイン、レイアウトなどをパソコン上で行って、データを制作することを指す。
翻訳工程の中で言われる「DTPの有無」は、一般的に翻訳後のレイアウト調整が必要かどうかを意味する。
印刷用PDF
印刷会社で入稿データとして使用するPDF。PDFの標準規格であるISO 32000に準拠していても印刷では不具合が生じて使えないということがあるため、印刷を目的としたPDFに対するISO 15930 (PDF/X) という標準が定められている。
組版
原稿及びレイアウトの指定に従って,文字・図版・写真などを配置する作業の総称。印刷の一工程としては、文字や図版などの要素を配置し、紙面を構成すること。組み付けともいう。
トンボ
印刷物を作成する際に、仕上がりサイズに断裁するための位置や、多色刷りの見当合わせのため、版下の天地・左右の中央と四隅などに付ける目印のこと。形が昆虫のトンボに似ていることから、こう呼ばれる。
版下
印刷工程において刷版の直接の原稿 (印刷用データ) となるもの。
以前は台紙に文字や図版を貼り付けるなどして作成していたが、現在はDTPでのデータ作成が多くなっている。
禁則処理
特に日本語の文書作成・組版において、「約物 (句読点・疑問符・括弧・アクセントなどのこと) が行頭・行末などにあってはならない」などとされる禁止事項、または、それらを回避するために、字詰めや文の長さを調整したりすること。禁則文字の種類や処理方法は、JIS X 4051において規定されている。
表1/表2/表3/表4
表1: 表紙、表2: 表紙 (表1) の裏面、表3: 裏表紙 (表4) の裏面、表4: 裏表紙。
約物 (やくもの)
言語の記述に使用する文字・数字以外の記述記号類の総称。
句読点、括弧類、引用符、つなぎ符、参照符、通貨記号、単位記号など。

その他

ISO15930 (印刷に関する規格)
別名PDF/X。印刷用データの交換を目的とする標準規格。
ISO17100 (翻訳に関する規格)
ISO17100は翻訳サービスの要求事項を定めた国際規格。
訳文の品質そのものを保証するものではなく、高品質の翻訳サービスのための翻訳プロセスに対する要求事項が規定されている規格。
人的資源 (翻訳者などの資格・力量など) 、技術的資源 (文書・記録の管理、セキュリティ、機器・システムなど) 、業務プロセス (制作前のプロセス及び活動 (引合い~プロジェクトの準備) ・制作プロセス (翻訳~最終検品及び引渡し) ・製作後のプロセス (フィードバック~終結管理) ) などが定められている。
認証取得にあたっては対象言語ペア、翻訳方向、翻訳分野 (A.金融・経済・法務、B.医学・医薬、C.工業・科学技術、D.特許・知財、E.その他) を特定している。
ISO18587 (ポストエディットに関する規格)
ISO17100 (JIS Y 17100) で対象外とされている機械翻訳のポストエディットについて定めている規格。本規格の対象はフルポストエディット (「人による翻訳 (3.4.3) によって得られる製品に匹敵する製品を制作するためのポストエディット (3.1.4) のプロセス」 (ISO18587:2017, 3.1.5) ) のみで、ライトポストエディット (「人による翻訳 (3.4.3) によって得られる製品に匹敵する製品を制作しようとすることなしに、単に理解可能なテキストを得るためのポストエディット (3.1.4) のプロセス」 (ISO18587:2017, 3.1.6) ) は対象とされていない。
JIS Y 17100 (翻訳に関する規格)
JIS Y 17100はISO17100を基に、技術的内容を変更することなく作成された日本産業規格。
一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会 (AAMT)
機械翻訳の研究開発者、製造販売者および利用者からなり、機械翻訳システムの開発・改良・啓蒙・普及を目指す任意団体。
https://aamt.info/
日本翻訳連盟 (JTF)
翻訳に関わる企業、団体、個人の会員からなる産業翻訳の業界団体。
https://www.jtf.jp/