独日文化の違い~日本の小学校に転入して~

私がドイツから帰国して日本の小学校に転入したのは遠い昔のことですが、当時受けたカルチャーショックはとても大きなものでした。その中のいくつかのエピソードをご紹介したいと思います。

父の仕事の関係で幼稚園の時に渡独し、小学校5年生までドイツで過ごしたため、私が日本の小学校に通ったのは6年生のときの1年間だけでした。両親は、いずれ私が日本の小学校に転入しても適応できるようにと、一時帰国した際には1ヶ月ほど日本の小学校に体験入学をさせてくれていました。ですから心の準備はできていましたが、それでも驚きの連続だったのです。

最初にびっくりしたのは学校指定品の数の多さでした。体操服、上履き、通学カバン、帽子、名札など数え上げればキリがありませんが、日本では授業で使う衣服や持ち物が学校側で当然のように指定されているのです。「なぜ皆同じ体操服を着て、同じ上履きを履いているのだろう?」ドイツでは好きな服装で登校し、各自が用意したウェアで運動するのが一般的です。当時の私は持ち物を統一する理由がわからないうえに、自分の好きなものを封印されたような気持ちになり、正直、とても嫌でした。大人になってからこうした日本の教育現場の考え方が理解できましたが、「日本人の没個性を助長する原因の一つがここにあるのでは?」と今でも思います。

※名札などのルールは小学校によって違います。私が通っていた小学校での話です。

次に給食です。初めて献立表を手に取ったときの衝撃は今でも忘れられません。
「1ヶ月先のお昼ご飯まで決まっているなんて!」ドイツではあり得ないことです。さらに「給食の飲み物は牛乳」という謎の組み合わせに対し、素朴に不思議だと思ったものです。人それぞれ食べ物に好き嫌いがあるのは自然なこと。それにもかかわらず全員が同じ料理を食し、おまけに残さず全部食べないといけないなんて、ちょっと厳しすぎませんか?

最後に、放課後に行われる掃除についてです。毎日子供たち自身で、ほうきや雑巾で教室や廊下を掃除することに驚きました。「掃除は掃除をする人がいて、そういう職業があるのになぜ?!しかもその雑巾、各自タオルを縫って持って行くの?!」
掃除の仕方もドイツとは全く違っていました。それは建物の構造の違いや、室内空間に対する日本人の考え方に起因しているのだろうと思います。
雑巾は、古いタオルを再利用して最後まで使い切るのが一般的です。一方で、割りばしや掃除用使い捨てクロス等のように使い捨てが当然のものもあります。
物を大切に最後まで使い切るという美意識と、「使い捨て」という概念が共存する日本の文化。それは環境やゴミに対する考え方にも影響しているのではと感じました。

次回は環境やゴミに対する考え方について、ドイツと日本の違いを掘り下げていきたいと思います。

前の記事

印刷用データ入稿時の注意点