旅する言葉たち

現在、世界で話されている言語は約7,000とされ、「語族(言語グループ)」と呼ばれる起源が同じ言語をひとまとめにした系統に振り分けられます。この言語グループの分け方については諸説あり、まだ定まらないところもありますが、欧州言語の大部分は概ね落ち着いたようです。
イギリスの大手新聞社『The Guardian』が2015年に掲載した記事に興味深いものがあったのでご紹介しましょう。

A language family tree – in pictures

大木の絵が目を引きますね。これは言語グループの関係を樹木に見立てた図です。幹に言語系統、葉に言語を記しており、葉の大きさはおおよその話者人口の比率を表しています。制作者は北欧で人気を博したウェブ漫画の作者Minna Sundberg氏。作品に登場する人物たちが互いに異なる北欧系の言語を話していても理解し合える理由を解説すべく、「インド・ヨーロッパ語族」と「ウラル語族」の分類を一本の大樹として表現したものです。
少し詳しく見てみましょう。該当のスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、そしてアイスランド語は、インド・ヨーロッパ語の幹からゲルマン語派に枝分かれし、さらに分岐した北ゲルマン語派から派生した「兄弟」のような関係にあることが分かります。一方、同じ北欧圏のフィンランド語を見てみると、図右下にあるウラル語から派生しておりルーツを異にしているため、共通点がない、あるいは少ないことが考えられ、隣接していても他の北欧4言語間のようには理解し合えないと予想されます。

では、逆に物理的な距離が遠い言語の場合はどうでしょうか?
現在、インド・ヨーロッパ語族が話者人口最大の語族とされ、約30億人が第一言語として用いています。ヨーロッパと遠く離れたインドが同じ語族に分類されているのです。ラテン語から生まれたフランス語やスペイン語、ゲルマン語から生まれた英語やドイツ語などの主要な欧州言語と、遠く離れたインドの言語が元々は同じグループだったなんて意外に思われるかも知れません。しかしその起源は今から5,000~6,000年前の中央アジアにあるとされ、遊牧民であった彼らがそこから各地に移動する過程で言語が拡散していったと言われています。やはり物理的な距離の近さと言語の類似性は、必ずしも一致しないようですね。

たとえば、インドの古典語であるサンスクリット語で「星」を意味する「stri(ストリ)」は、ラテン語の「stella(ステラ)」、英語の「star(スター)」と語源が同じです。ちなみに当社の社名「シュタール」はスイス本社で話されているドイツ語の「star(シュタール)」からきたものです。他にも同じ語源を有する単語は色々あるので、探してみてはいかがでしょうか。