外国人泣かせの日本語~第1回

グローバル化が進み、インターネットを使用する人口が増え続ける昨今、外国語学習者も年々増加しています。
それは日本語も同じことで、特に日本語の場合は、漫画やアニメがきっかけで学び始める外国人が多いそうです。ところが勉強を始めてはみたものの、あまりの難しさに大勢の学習者が悲鳴を上げてしまうのも事実のようです。私たち日本語ネイティブにとってはあまりに自然で特に気にならない日本語の特徴も、外国語として学ぶ学習者の目にはとても不思議に映っているのです。実際、日本語を外国語として学ぶことは他の外国語を学ぶ場合と比べてどれくらい大変なのか、また日本語のどのような要素が学習者を苦しませているのかを調べてみました。

案の定、問題は奥深く複雑でしたので、3回に分けてご紹介します。

1回目となる今回は、「習得のために必要な時間」という観点から見ていきましょう。

アメリカ国防省にある外交官養成局 (Foreign Service Institute:アメリカの外交を担う人員に外国語を身につけさせるための機関)が非常に興味深いデータを公表しました。それが「英語を母国語とする人員に対し、外国語を使って仕事ができるレベルに達するまでの時間を基にした外国語の難易度」です。
Foreign Language Training

レベルは全部で4段階あり、難易度の低いものからカテゴリー1(講義時間600-750)、カテゴリーⅡ(講義時間900)、カテゴリーⅢ(講義時間1100)となっており、最も難しいとされるカテゴリーⅣ(講義時間2200)に日本語が記されています。英語に似ていることから講義時間が600時間程度とされるイタリア語やスペイン語などと比べると、日本語は実に4倍近い長さの講義を経る必要があるということです。念のために強調しておきますが、これは外交官などあらかじめトップレベルの言語能力を有する人たちを対象にしたデータです。ですから一般の外国語学習者はその何倍もの時間と労力を要することは想像に難くありません。また、日本語と同じカテゴリーにアラビア語、広東語、北京語、韓国語があることから考えると、ローマ字を使用せず、語順や発音、単語、文法などで類似点が少ない言語の習得は、英語を母国語とする人々にとって大きなハードルとなるようです。逆に韓国語を母国語にする人たちにとって、韓国語と類似点が比較的多いとされる日本語は、意外と取り掛かりやすいのかもしれません。

とは言え、いずれの言語であっても、外国語学習は粘り強く長きにわたって取り組むことが求められるのですから、わりと母国語と似ているからという理由だけで選択した言語の学習は、いずれ挫折してしまうでしょう。延々と続く勉強が苦にならないほどの、学習者が持つ強いモチベーションこそ、習得の鍵なのだと思います。そういう意味では、日本の漫画やアニメは、日本語学習者を突き動かして寄り添ってくれる大きな支えであると言えるでしょう。

次回は、日本語学習者が日本語を難しいと思う理由を掘り下げてみたいと思います。

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