外国人泣かせの日本語~第2回

前回、日本語学習者にとって「習得のために必要な時間」という観点から、他言語と比較した場合の日本語の難易度についてご紹介しました。

2回目となる今回は、実際に日本語学習者が日本語を難しいと思う主な理由6つのうち、3つを挙げてみたいと思います。日本人にとっての「当たり前」が、日本語学習者には「特殊」に映る背景を見ていきましょう。

1. 文字が3種類もある

日本語の文章を書く際は、ひらがな、カタカナ、漢字と3種類の文字を適切に使い分けなければいけません。ひらがなとカタカナだけで許されるのは幼稚園までですよね。現代の「常用漢字」の数はおよそ2,000です。普通の文章を書くためだけに覚えなければならない文字の数としては、やはり多いでしょう。

2. 漢字に訓読みと音読みがある

日本独自の読み方である訓読みと、中国語としての漢字の発音に基づく読み方である音読み。文字の組み合わせによって読み方が変わるうえ、読み方が複数ある漢字もたくさんあります。知らなければ読めず、発音できないわけですから、ひたすら覚えるしかありません。ちなみに読み方の種類が最も多い漢字は「生」。地名などの特殊な例を含めると、100通り以上あるそうです。

3.主語や目的語が省かれる

「きのう、ラザニアを作って食べました」
「そうですか、美味しく作れましたか?」
日本語ネイティブであれば何も違和感を覚えない文章ですが、主語がなく、代わりに副詞が主語の位置にあったり、目的語がなかったりと省略が多いこうした文章は、日本語学習者には分かりづらい構造になっているのです。このように、対話する人の間で「暗黙の了解(会話内では言語化されない前提、知識、価値観など)」が多い文化を「ハイコンテクスト文化」といい、日本は典型的なハイコンテクスト文化に属します。一方、コミュニケーションの際に言語で表現された内容に重きが置かれる文化を「ローコンテクスト文化」といい、欧米諸国がその代表となります(ハイコンテクスト/ローコンテクストはあくまでもコミュニケーションにおける言語の役割の比重度を示す目安であり、文化レベルとは関係ありません)。

ハイコンテクスト文化は「空気を読む文化」と言い換えることができ、日本ではこの空気を読むことを、暗黙のうちに期待されているのです。言語で表現された情報以外も分かった上で対話することを前提にされてしまうと、ローコンテクスト文化に属する人は、何となく「アンフェア」だと感じるかもしれません。

まずは前編として3つを挙げてみました。日本や日本文化に興味がない人からすれば、日本語はまさに理解不能な言語と言えるでしょう。かつてキリスト教の布教のために日本へやってきたポルトガル人宣教師のフランシスコ・ザビエルが、あまりの難しさに日本語を「悪魔の言葉」と表現したという逸話が伝えられているそうですが、そう言いたくなる気持ちも分かりますね。

次回は日本語が難しいとされる残りの3つの理由をご紹介します。

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